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この記事のみを表示する第20回文学フリマ東京感想祭り☆その1

文芸イベント関連

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もう5月も後半に入ってしまいましたが、今回も恒例の感想祭りを開催したいと思います!
何回かにわたって随時更新していく予定なので、どうぞよろしくお願いします^^

第一回目は、史文庫さまの短編集2冊についてお送りします♪


******

史文庫 唐橋史さま
 
『さんた・るちやによる十三秒間の福音』
『切腹事始』


いまや文フリの参加者で知らない人はいらっしゃらないのでは?というくらい
有名サークルさまの短編集2冊を、遅ればせながら読ませていただきました。
何年か前に、うちのサークルにご感想を寄せていただいたことがあったのに、なかなか
参加イベントがかち合わず、数年の時を経てやっとご挨拶に伺うことができて、ちょっと
ほっとしたような気分です…(微妙にずっと気になってました…^^;)

二つとも短編集なのですが、ちょうどいい長さで、どの作品もとても読みやすかったです。
文章から、歴史小説的…っていうのかな、そういうジャンルのものにふさわしい、すっと潔い
ような印象を受けました。そういう文体と、ドラマチックな展開とのバランスが絶妙で、
時代の雰囲気にも合っていて、読んでいて気持ちがよかったです。
本によって感想を分けようかとも思ったのですが、二つの本を混ぜたほうが書きやすいので
そうさせてもらいますね。

幕末についての話がどちらの本にも一つずつ書かれていて、すごく興味をひかれました。
『smile』では、当時の混乱した江戸の状態とか、住んでいた人たちがその状況について
どんなふうに考えていたのか、とかいうことを垣間見させてもらえて、そこがとても面白かったです。
TVドラマや歴史的人物が登場する小説で扱われる幕末って、実際の庶民の生活や感覚に光が
当たることって少ない気がして…。
震災復興のチャリティー企画として書き下ろされたお話とのことですが、内容的にもぴったりだと
思いました。
同じ時代のお話として『切腹事始』も興味深かったです。私自身、切腹や、それに付随する
武士の誉れ的なイメージが全然よく分からん、みたいなところがあって、本を読んだりしていたの
ですが、それでも切腹というものに対する感覚はどうしても不可解であるとしか思えず…^^;
だけど、そういう感性って、昭和に脈々と引き継がれ、今も日本の多くの人たちの意識の表層下で
受け継がれてるような気もしています。だからちゃんと理解できたらとも思うけど、感覚的な観点から
切腹について理解するのは、私にとってはなかなか難しいです。
あの時代に、この作品の主人公の人みたいに理性的な感覚で世界を見ていた人って、実際どれくらい
いたのだろうな、と思います。でも、そういう人たちは確かにいて、だから世の中は新しい方向へ動いて
いったのかもしれませんね。
あっ、幕末テーマの話では、江戸の人が薩長の人間について、田舎の野蛮人(言いすぎ?笑)っぽい
イメージで思ってたっぽいニュアンスで書かれていたのですが、ああ…きっと実際そうだったのかな…
と思いました^^;
『切腹事始』でも、西軍が攻め込んでくる、みたいな視点で書かれていましたが、実際、戦時下での
ことだし、色々な問題行動はあったんでしょうね…><
私自身が九州由来の人間なんで、普段は感じない日本の東西の距離を感じたりもしました。

幕末以外の作品もそれぞれ面白かったです。
『さんた・るちやによる十三秒間の福音』と『或る罪人の死』の処刑のシーンなどは、それそのものの
怖さもありますが、それを見てはやし立てたり野次を飛ばすギャラリーの怖さ、みたいなもののほうを
より強く感じました。
公開処刑、って、昔の時代は特に、どこか見世物的というか、娯楽というか、そういう面もなきにしも
あらずだったのかもしれませんよね…。そういう集団独特の心理ってすごく怖いなぁと思いますが、
実際娯楽なんてそんなに無かっただろうし、そういう面はどうしても否定できないような気がします。
『さんた・るちや』のほうは、そういう点に加えてキリシタンの持つ殉教への憧れと現実を淡々と
描くことによって、信仰ってなんだろう、みたいな大きな問いにまで迫る勢いで、短いお話なのに
すごいなぁと思いました。
あっ『騙る女』も良かったです!お話っぽくもあり、リアルでもあり。時代を超えて、こういう女性って
いるのかもしれないですね。

全体的な感想として、おそらく作者さまがこういう題材で物語を書くに当たって、ご自身が持たれた
であろう疑問や、ある種の正義感のようなものを感じました。一見すごく淡白に書かれているようにも
見えますが、多分歴史を見る視点の中にすごく強い思いがあって、それが作品の底に大きく流れて
いる感じがする点がとてもよかったです。
あと、多分ですが、興味の方向が自分と似てるな~と思いました。
すごく歴史に詳しくないと書けないジャンルなので、こういう作品を書かれる方はほんとに尊敬します。
これからも色々な作品を通して、勉強させていただきたいです。