猫とワタシ

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この記事のみを表示する『残穢』感想

本・漫画・映画

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諸般の事情のため(?)今回は書影なしで…^^;

小野不由美さんの『残穢』を読みました。

以前何となく買った『鬼談百景』という作品が、読者から集めた
実話怪談が99話載った本でして、この『残穢』が百話目になっている、
という話を聞きまして、それは読まねば! と思ったのが手に取る
きっかけだったのですが、、

読んで思ったのは、すごく変わった趣向のホラー小説だということ。
主人公が作者さまのプロフィールに近い人物(もしくは作者そのもの?)
に設定してあるらしく、実在の人物や、飼っている猫ちゃん(笑)まで
出てくるので驚きました。
作品の形式も面白かったです。ある土地をめぐって、地縁のある人から
聞き取り調査をして得た情報をつなげて広げていく形式になっていて、
時系列もかなり綿密に繊細に書かれています。
平成~明治にかけて、長い時間を遡っていくのですが、その時々で
背景になった時代の空気なども、とてもリアルに描かれています。
主人公自身は、霊的な現象にはどちらかといえば懐疑的な態度を
貫いていて、得た情報についても、かなり理性的な抑制がかかった
捉え方をします。けれど、そんな冷静な人の目から見ても、異常だと
認めざるを得ないような不気味なつながりを見せる怪談話や事件が
次々と明らかになっていき、そのリアリティがとても見事なので、
自分の身の回りでも起こるかもしれない、という恐ろしさを、
読んでいる最中よりも、むしろ読了後に残すような作品になっています。
いやはや、奇書の類に入るんじゃないでしょうか…! 
物理的にこの本が怖くなるという方も多いみたいですよ…^^;
ホラーがお好きな方には超お勧めします~!!
逆に怖い話が苦手なかたは無理だと思うので近づかないでくださいね。


個人的な感想としては、この作品で時々書かれた「穢れ」についての話が
面白かったです。それが仏教の「不浄」と繋がって云々…みたいな、
ちょっとした話がさしはさまれるあたり。
民俗学が好きなので、そういう話はとても興味深いですね。
「穢れ」とは「他者の外面に限定的に存在するもの」であり、祓えるものである、
という日本古来の捉え方は、仏教の「不浄」の概念とは違うものである…、と
いうような話がありましたが、とすれば、神道や修験道とか、あちらの
感覚に近いのかもしれませんね(…そのあたり、ぜんぜん詳しくはないです)

私は人が持つマイナスの想念みたいなものに興味があって、つい、
恨みつらみがどうこうといった陰惨な話を読む傾向に偏ってしまいがちに
なるのですが、そういう「思いの力」が現実に何かの影響を及ぼすことを
書いた作品はすごく気になってしまいます。
だからどうしてもホラーや怪談に引っかかる作品が多いのですが、それは
特に怖いものが好きだからじゃなくて、「思いの力」が及ぼす作用について
書かれたものが好きだから、なんですよね。
怒りや恨みという思念は「祟り」などというものに繋がりやすいですしね~…
強いですよね。
それは特別な話じゃなくて、普通に、何か不安やイライラがあって心が弱ると、
胃が痛んだりすることってありますよね。
あれだって、ある意味自らの中にあるマイナスの想念が及ぼす力なわけで…。
外的に、故意に人を想念で害することができるかどうか(要は人を呪えるか)は
わからないけど、少なくとも、心の状態は体と不可分につながっていて、
それがどこまでどのようにつながっているのかということに興味があります。
科学とは全然別次元の、信用のない怪しげな分野の話ではあるんですが、
そういうものこそ文芸で追及できたら楽しいと思うし、ある意味物語とはそういう
「力」を駆使して書くものだとも思うんですよね~。
何かを読んで感動したり、怖いと感じることも、心の世界の及ぼす作用が働いた
結果なんだろうし。
そういう意味で、ホラーとは、ダイレクトにそういう部分に突っ込んだジャンルなので
私には興味深いわけです。
(怖いものが好きなわけじゃないのが辛いところですが…^^;)

『残穢』は、そういう私の興味にすごく答えてくれた作品で、後半にいくにつれ、
色々納得(?)するところが大きかったです。
自分が持っている感覚に、ぴったりハマるというか、わかる感があるというか。
創作なんでしょうけど、この「わかる」感じがとてもリアルで、書かれていることが
普通のことのようにさえ思えて、その結果、逆に怖さが薄れるぐらいのリアルさを
感じました。
この土地に住んでたまたまひどい末路を迎えてしまった人は、要するにとんでも
ない事故に巻き込まれたのと同じようなものだなー…みたいな印象になってしまった
というか。
人によって「残穢」に影響を受ける人と受けない人がいるところなんか、特に
ありそうだな…、と思います。
一人ひとりの心や感受性などと関係すると考えると、影響の大小は個人差が
大きいと思うし。
そういうやばいモノと周波数が合わないことを祈るばかりです……。
あと、「祓う」ということにちょっと興味が湧きました。
「お祓い」って、どこまで効果があるのかなー(実はあまり信用していない人)
祓ってくれる人の人間性によって効果あったりなかったりしないのかなー、とか。
そっちのほうは全然ぴんと来ないので、今後の課題、といったところでしょうか^^;

ちなみに、この手の話はぜんぶあり得ないし、作り事でしょ、と思って
読まれる方ってどれくらいいらっしゃるんでしょうね。
そう思うのなら、本を手元に置いておくのも怖い! とはならないと思うので
一定数の方はこの「わかる」感じを共有してるのかな、とも思うのですが。
それとも、そういう考えの人は、そもそもこういう本は手に取らないのかな。
あまり日常でそういう話を人としないので(頭おかしいと思われたら困るしw)
どうなのかな~。気になるところです。

いやはや、奇妙な感想になりましたが、たいへん興味深く、面白かったです。
『屍鬼』も大好きなので、小野さんのほかの本も読んでみようと思います~。