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この記事のみを表示する文学フリマin大阪☆感想祭り その1

文芸イベント関連

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どうしようか迷ってましたが、今年もやります感想祭り(´∀`)ノ

一回目の今日は、かなりねちっこく書いた感想をお送りします。
思い切りネタバレしちゃってます。あしからずご了承ください(>_<)

ものすご~く長いので、たたみます^^;



樹林 vol.569
大阪文学学校 在校生作品特集号

文学フリマでは、毎回何冊か大学文芸部の作品集や団体さまの
短編作品集を買い求めるのですが、今回は短編小説の作品集らしきものは
この1冊だけになりました。

会場をフラフラと歩いていたら、声を掛けられ、
「文学界新人賞(だったかな?うろ覚え)をとった〇〇さんの作品が入ってます~お勧めです!」
と盛んにプッシュされ、その後「学校に入りませんか?すごく楽しいですよ~」
みたいなお話をされ、何となく長々と話を聞いたので場の流れで手に取ってみた、
みたいな本だったわけですが。

結果、面白かったです。全部が全部ピンとくるものではなかったし、
ちゃんと読めているわけでもありませんが、気になったものは結構しっかり読みました。
読んだ中から何作か、感想を書こうと思います。


『Run!』

性描写や暴力が多数、やや斜に構えた擦れた女子的な軽い口調で語られた文体、
パッと見あまり読まないタイプの作品でしたが、とにかく勢いがありテンポもよく、
嫌味もなくすんなり読めました。
作者さんが女性ということで、女の人のやだな~ってところを余すところなく
どかーんと盛ってきた感じの作品で、若干ありがちな点もなくはなかったのですが、
語りのノリの良さと、そこまでするか、というくらいの展開の激しさで最後まで一気に
読ませる面白い作品でした。
幼馴染の男女三人の関係で、女同士の方はよく分かるのですが、主人公と、主人公が
好きなせふれ男子(=友人女子の彼氏)との関係性がよく分からなかったところはあるかも。
主人公は、彼を彼個人として好きだったのか、単に大嫌いな幼馴染の彼氏という立場だったから
好きだと錯覚していたのか。そして彼のほうは結局、主人公が好きだったのか何だったのか。
単に主人公に見下されまいとしていただけなのか、実際彼がお付き合いしていた、見た目その他で
ぬきんでている(らしい)主人公の友人のほうを本当のところは大事に思ってたのか、
その辺りの感情と、複雑に絡み合った三者それぞれの人間関係がやや不明瞭に感じるのは、
もしかしたらそれすらも狙いではあったのかもしれませんが、もう少し分かりやすくして
くれたらな~という、消化不良みたいな感覚がいくらか残りました。
とはいえ、この作品はタイトルが示すとおり、若い頃の感情の疾走感、みたいなものが
一番の肝であり、そこに付随するわけの分からない感情がそのままの形で
生々しくと表現されているところが良いところであるという見方も出来ると思いますので、
これはこれでアリなのかな、という気もしました。
色々書きましたが理屈ぬきで印象に残る作品だと思います。



『北京』

この本に収録されていた作品の中で、この作品が一番好きでした!
主人公が謎の団体のHPを終日監視するという退屈な仕事を任されるくだりは、何となく
先日読んだポール・オースターの『幽霊たち』という作品を彷彿とさせました。
ただ、本作の主人公は『幽霊たち』の主人公と違い、破綻することなくその退屈な
作業をこなしていきます。
そしてトイレに空いた穴の向こうに自分にとって心地よい空間を発見し、そこに安住しているうちに
その不思議な空間から更に謎の団体のメンバーと繋がっていく…という、ストーリー自体は
かなりナンセンスなお話なわけですが、この作品のベースにあるものに、すごく共感しました。
徹底的に「信じる」ことのできない世界。主人公は、幼少時代虐待を受け、親の愛を信じることが
できない。引き取られた先の義両親に「死ね」という言葉を投げることによって彼らの愛を
確かめようとして失敗し、孤独である。
そこに主人公の生きている「信じる」ことの出来ない現実世界が被ってくる。
政府が信じられない、ネットのソースが信じられない、何もかもを誰かが改ざんし、
世の中を混乱させ、操作しようとしている。
そういう世の中に横たわる「不信」という大きな黒い塊のようなものが作品の底に重たく
流れていて、ナンセンスな作風の中にあって、それはとてもリアルに感じました。
それは近未来の遠い話などではなく、まさに今の世相を写したものではないかと思います。
作品の後ろに書かれている選評に、表題の北京、について、なぜ北京なのか、もっと理由を明確に、
という言葉がいくつか見られましたが、個人的には、それが意味不明であるからいいんではないかな、
という気がしました。ああいう謎の団体の理論というものは、その中にいる人だけに共有され
理解されるべきものであって、その団体の外にある人間には理解されないところにその本質が
あるような気がするので。
ナンセンスが過ぎると意味不明になる、という選評も見ましたが、この作品に関しては
確かにいくつか分かり辛い箇所はあったものの、個々の事象がナンセンスなだけで、大きく見ると、
基本筋の通った作品であるように感じました。
最後に主人公が団体の人に誘われて北京に行き、世の中を混乱させる側に付かないか、と誘われる
シーンがありますが、主人公ははっきり拒否します。
そこが彼にとって、人生の大きな転機であったように思います。
過去にわだかまったさまざまな「不信」に終止符を打ち、そんな世界の中で、それでも人と一緒に
生きることを選択できた主人公の、ラストのシーンは素直によかったなぁと思いました。
物語のベースがものすごく暗く重たいものを有しているだけに、ああいう救いのある終わり方で
私自身、ほっとする気持ちで読めました。

あと、謎の団体の人たちの台詞とか理屈がいちいち面白かったです。
日本の天皇を北京に据えてどうこうってやつ(笑)
ああいう屈折した、はちゃめちゃでブラックな理屈を考えられるってすごいな~と思いました。
今の自分に漠然とあるモヤモヤをピタリと言い当ててくれたような作品で、
共感できることが多く、色々考えさせられた作品でした。


『水木春奈だったころ』

小学三年生の視点から、大人の事情で引越して新しい家に連れていかれ、その後元の家に
戻るまでを語った物語でした。
選評を見る限り、一番支持された作品だったようで、概ねどの方にも好評だったようですし、
事実文章も安定していて読みやすく、内容も理解しやすかったです。ただ正直、私にとっては
目新しいものがなく、さほど心に残るような内容ではなかったように思います。
子供の目線ということで、大人の世界に対するざらざらとした違和感というか、苛立ちの
ようなものを直接的ではないふんわりとした表現でうまくかもし出していく、という手法が
評価されていたように思います。もしかしたら、そういうことを『文学的』というのかも
しれませんね。(私はそういう技術的なことにはまるで疎いので、よく分からないですが)
多分作品の最も柱になるのであろう母親と主人公である娘の関係が、分かったような
分からないような、積極的には語られていなくて少し不思議でした。
あと、母親の恋人(旦那?)と、主人公の女の子が相容れなかったというのは明確なのですが、
結局のところその男性がどのような人間性であったのかも、今ひとつ分からないままでした。
多分、主人公が子供で、その目線から書かれた作品であるため、主人公が分からない部分は
謎のままにしてあったのかもしれません。漠然とどこがどうとはよく分からないけれど
少し怖い大人って、いましたよね、子供の頃って…。
そんな感じで読んでみたら、その男性は主人公にとって、えもいわれぬ不気味な存在、
ということだったのかもしれません。
作品としては、きれいでまとまっていたように思います。平易な文章で飾りなく書かれて
いた点も、好感が持てました。



これ以上長くなってもアレなんで、これくらいにしておきます^^;
大阪文学学校の方々は選評などに慣れていらっしゃるようなので、いつもよりは
率直に書いたかもしれません。
感想の中にも書きましたが、この本は学生さんの傑作選であり、選んだ人たちの評価が作品の
最後にそれぞれ書かれています。それを読むのもすごく新鮮で面白かったです。
選評を読む限り、内容というよりも、手法のほうに目を向けている方が多かったような気がします。
もうちょっと内容を掘り下げた選評もあったら面白かったかも…。
もしかしたら授業では、そういう話もされているのかもしれませんが。
こういうところで切磋琢磨しておられる方々がいらっしゃるのですね…すごいなぁ。尊敬します。

 
上に上げた三つの作品は、どれも幼少時の大人との軋轢、みたいなものがベースにあって、
そういうものがテーマ、もしくはエッセンスになりやすいのかな、という印象を受けました。
たまたまかもしれませんが、そういうものを一気に読むと、少々精神的にきつかったです。
たまには良好な親子関係を生きて大人に成長した登場人物だっていてもいいんじゃないか、
とかつい思っちゃいました(それではお話にならないのかもしれませんが…笑)

…で。新人賞を取った人の作品って、結局どれだったかは分からず仕舞いです^^;
とはいえ、そんなことは関係なく、色々と楽しめる作品集でした。
またブースをお見かけした時には、立ち寄ろうと思います。










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