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廻る針の一夕語り』読了しました!!

どの作品も面白かったです。いや、ほんとにお世辞抜きで!

人によって読む本は違うし、文学作品を嗜好される方、エンタメが好きな方、色々
いらっしゃるとは思いますが、この作品集に載っている作品に関しては、文章力とか技巧とか、
そういうことは瑣末なことだと思わせる勢いみたいなものを感じました。
基本優しい言葉で紡がれた物語ばかりです。何か難しいことを言ってやろうという気負い
を感じることはなくて、そういう平易な言葉だからこそ表現できる温かくて大切な何かが
いっぱい溢れた物語集でした。読む人を幸せにしてくれるエネルギーに満ちた
本に仕上がっていると思います。
同人作品を読むとよく感じる、物語が好きだという気持ちを原動力にして書いている、
という感じがどの作品の中にも見られて、同じように書くことが好きな私は
とても共感できましたし、嬉しく好ましく感じました。


本の表紙、目次や中表紙、ヘッダーのデザイン、文字の配置など、編集された方や
デザインされた方の繊細な配慮が感じられ、本としても、とても素敵な仕上がりになっています。
900円という値段は同人の世界では若干お高いほうかもしれませんが、これだけの
ボリュームと内容、本自体の美しさも考え合わせると、まず手に取って損はないと思います。
日々の暮らしにちょっと疲れたようなときに、ふとページをめくってパラパラと
読んでみたくなる、そういう日常に優しく寄り添ってくれるような本だと思います。
たまたまツイッターで原稿を募集されているのを見かけ、野生の勘だけで応募した
私ですが、この中に自分が混じれたのが素直に嬉しくもあり、だけどほんとに良かったの
だろうか…と思う部分もあり(浮いてないか心配…^^;)色々複雑ではありますが、
自分の参加の有無に関わらず、安定の面白さが保障された本だと思います。
お世辞じゃなく(←大事なことなので二回言った 笑)
良い本に仕上がっていると思います^^ずっと大切に持っていたいと思います。


以下、作品別の感想も書きましたので、ご覧いただけたらと思います。
なるだけネタバレしないようにしたつもりですが、何か問題あればご指摘くだされば
ありがたいです。

ほんとは2、3回に記事を分けるつもりだったのですが、めんどくさくなったので
一気上げしておきますね^^;
ひとつひとつは短いのですが14作品ありますので全部読むとものすごく長いですスミマセン。。





春萌す方    恣意セシルさま

春という季節にぴったりの、色彩に溢れた可愛らしく美しいお話でした。
台詞や文章が柔らかくて心地よく、頭の中にいっぱい魅力的な景色が広がったので、
小さな子どもたちも読めるような絵本になったら素敵だな~と思いました。
まだ長い文章が難しい子供たち向けに、絵本バージョンの文章を作って、絵師さまと
コラボしたらできるんじゃコレ…!?とか妄想するくらいには、絵本化いいなぁと
思いましたです。いやでも、絵本が無理でも、読み聞かせとかでもいいかも。
文章だけでもこの作品の魅力は十分伝わると思います。



魔女の遺品    猫春さま

方位、といえば、日本(アジア?)的にはやはり風水のようなイメージがありますが、
意外なことに、そういう和テイストの方位を題材とした物語ってこの作品だけだった…かも?
四つの方角をつかさどるものたちのバランスや、魔を封じる、みたいな題材はクラシカルでもあり、
ファンタジックでもありますが、そういう物語性の強い素材をコミカルなキャラクター達が
面白く彩って展開していく楽しいお話でした。
最後の一文が印象的でした。これから色々な物語が広がっていくような、わくわくする
予感に満ちた作品だったと思います。


北海道中エルボーバイシクル    マンノンさま

形式が小説っぽくなくて、どことなくシナリオ的な二人の会話のテンポが楽しくて、
それに乗ってサクサクと読めました。
リアルに存在するお店でお茶する二人の男性の日常の中に作者さんの妄想(?)の
世界がさらっと混じりこんできて、現実から徐々に逸脱していくような、勢いのある
作りがとても気持ちよかったです。オチも好き。
時々文学フリマでこういう種類の作品に出会うことがあるのですが、自分には
書けなさそうな種類の作品なので毎度すごく憧れます。面白かったです。


彗星旅団    伊織さま

タイトルがまずかっこいいです!短いお話でしたが、登場人物たちの過ごす景色を
丁寧に切り取った、綺麗な作品でした。
虫や鳥たちが運ぶ手紙だなんて、浪漫でいいなぁ…!! SFっぽい宇宙的な要素と
地上の自然や懐かしい遊園地の風景が混在している独特の雰囲気がとても印象に残りました。


明るいところで光る星    日野裕太郎さま

象が支える大地の上で生きる人たち、というかなり個性的な設定のファンタジー作品で
ドキドキしながら読みました。
生活している大地が根底から崩れ去る、故郷に住めなくなる、という不安は特に、
東日本の震災を経験した私たちにとって、かなりリアルに感じるところではないでしょうか。
そういう現実と、これからまたやってくるだろう地震への不安とが重なって、登場人物の
気持ちにより感情移入したところがあると思います。
旅の終わりに二人がたどり着く場所が真に安寧の地になればいいなぁと少し祈るような
気持ちになりました。


魔女の祝福と人の王    相沢ナナコさま

世界を治める王様に子供が生まれたのを祝う、幸せに満ちたお話でした。
言葉のリズムがよくて、明るくほのぼのとした雰囲気で、気持ちよく読めました。
人が生まれたときに受ける祝福が誰の上にもこんな風に訪れたらいいのにな、と
思えるような、温かい気持ちになれる作品でした。


ケントと星のコンパス    R・H・恵賭さま

人が人を思う気持ち、親子がお互いを思う気持ちをとても純粋な形で結晶化したような
美しいお話で、じーんとしながら読みました。
何となく、昔よく見聞きして馴染んだ、懐かしい昔話を読んでいるような気持ちに
なりました。ああいうシンプルなお話の中に、一番大切なものが込められているの
かもしれない。そんな風に思わせてくれる素敵な物語でした。


鈴の音の響くところ    くまっこさま

羅盤の世界。本来なら無機質で完璧なはずものを狂わす源が感情、というのは
素敵な齟齬だと思います。最後がほのぼのと幸せな雰囲気で嬉しかったです。
弟くんが優しくて可愛くて、すずりちゃんが凛としてて素敵でした。
あと、温石とか衣装の描写が綺麗で惹きこまれました。
こういう細かい一つ一つのものの持つ美しさとか温度みたいなものを、私も
丁寧に表現できるようになりたいな~と思いながら読ませていただきました。



宵闇喫茶   ななさま

宵闇喫茶、という仕掛け自体がとても面白く、これはきっと、ここを訪れる人の数だけ
色んなパターンの物語ができるなぁと思いました。
シリーズ化してみてもいいかもしれないですよ~、これ!
宵闇喫茶を訪れる人びとの、様々な人生の物語を読んでみたくなるような作品でした。


彼女の右手    久地加夜子さま

図書館の雰囲気、謎めいた司書の女性、過去の幼馴染の記憶と怖い夢、
そしてその夢の理由が徐々に明らかになっていく過程を主人公と一緒にドキドキと
追体験できる作品でした。怖い描写が結構あったけれど、基本とても馴染みやすい文体で、
読みやすかったです。
完結してないような終わり方だったので、この先がどうなるのか気になります。


時計さん    高村暦さま

このアンソロジーのテーマを大切に捉えた物語で、とても誠実な印象の作品でした。
比較的短い作品でしたが、言葉の選び方が丁寧で、言葉の裏にある思想の重み、
みたいなものを感じました。
自分が好きなモノ、人などの要素を盛り込んで創作する、というパターンもありますが、
この作品は具体的に好きなモノを盛り込むというより、モノを通してその人の思考が物語に
散りばめられているというような印象だったです。
そういう意味で、文学的色彩の強い作品のように感じました。


ネヴァーランドのわたしたち    あずみさま

戦時中のイギリスを舞台にしたお話で、その時代に詳しくないと書けないような
内容だったので、とても興味深く読みました。
私も時々(というか今回寄稿した作品もそうでしたが)戦争を題材にして書くことはあるのですが、
自分の切り口とまったく違っていて新鮮でした。この作品もそうでしたが、一般に創作の中で
扱われる空軍のイメージって、何か独特の憧れのようなものを孕んでいて、その他の軍隊(特に陸軍)
の泥臭くて悲惨なイメージとはかなり違うのかもしれません。
イギリスという舞台、ピーターパンの物語とこの時代の人たちの葛藤がうまく繋がっていて
とても読みやすく、作者さま独特の世界が作り上げられている美しい作品だと思いました。


南の空の、冬の三ツ星    みやのはるかさま

人の死から始まるお話でした。見えなくなるもの、消えてしまうものに
対する寂しさや不安がありながらも、見えなくても決して消えることのない星に
希望が投影されていたような気がして、悲しいだけではなかったところが好きでした。
昼の星は見えないけれど、決してなくなったわけではない。
そう思うと、確かに勇気付けられるような気がします。


指針と羅針    泉由良さま

作者さまが後書きに連詩、と書かれていましたが、一つ一つの詩が
どこか繋がりを持って書かれているものを連詩、と呼ぶのでしょうか。
…というくらいのレベルで詩は全然詳しくないのですが、
その作品ごとの繋がりがとても素晴らしく感じました。
言葉をこういう風に紡ぐことのできる人ってすごいなぁと詩を書く人の
作品を読むたびに思うのですが、泉さまの作品でもそれを強く感じました。
自分にこういう感性が皆無なので、ものすごく羨ましいです…!!
どの詩もすごく大好きなのですが、最後の詩は特に力強くて勇気付けられます。
この作品集の最後を飾るのにふさわしい言葉だと思いました。


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