猫とワタシ

Wandering Note

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この記事のみを表示する第三回文フリ大阪感想文その4

文芸イベント関連


文フリ大阪の感想も4回目です。
なんだかんだで結構書いているな…。

今回ご紹介する2冊の本は、たまたま見かけて衝動買いした本なので、
サークルさんなどの詳細がよく分かりません^^;
ノンフィクションのエリアにあって、委託で販売されていた本だと思います。

ちょっと特殊な本なので、今回はあまり宣伝もせず、ひっそりと上げさせてもらいますね…


john.jpg


永田喜嗣さま

『ジョン・ラーベ 南京のシンドラーの謎 ~映画では語られなかったもうひとつの真実~』

『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』というタイトルの、独・仏・中合作映画について、
そしてその主人公であるジョン・ラーベという人が実際はどんな人だったのかを、
その作品内容や、残された日記、関連書籍と絡めて浮かび上がらせる、という趣旨の本です。
ジョン・ラーベという人をそもそも知っている人がどれくらいいるのか分からないのですが
(私はまったく知りませんでした)、とても分かりやすくて、興味を引かれる内容でした。
ジョン・ラーベとは、南/京/事/件勃発時に、南京安全区国際委員会代表という要職に
あった人です。自宅エリアに難民を多数避難させたり、非人道的行為の防止に尽力し、
多くの人の命を救ったということで知られています。
ところで、上記の事件について、実際のところどうだったのかという話は、色んな人が
色んなことを言っていて、正直なところ、びびりの私には取り上げることさえためらうような
題材です。
(ネットの海にはいろんな人がいますからね…。。)
数年前、ネット上で読める範囲で、従軍を経験された方々が書かれた戦争体験の手記を
探して集中して読んだ時期があったのですが、当該事件についての記載はあまり見当たり
ませんでした。
ただ、「その期間の日記のページだけごっそり切り取られていた」と書かれているものに遭遇したり、
1件だけですが、実際、当時現地に居られた方が見た町の光景についての記述を目にしたことが
あるぐらいで(そこにはぞっとするような市街の様子が書かれていました)、なかなかその実像を
知ることは難しいのだな、と痛感しました。
それ以来、すごく気にはなっていたのですが、個人の日記ですら切り取られるくらい強い緘口令が
敷かれていたとしたら、信頼できる資料もどれくらい残っているのか分からないな…、と、とにかく
取っ掛かりがなさすぎて、事実を知るのは本当に難しいのかもしれない…と思っていました。

ラーベがどんな人で、彼がどんな考えを持って行動をしていたのか。その功績の割に、あまり報われた
生涯ではなかったのは気の毒だとは思うのですが、正直なところ、私個人として、彼の人となりについて
はそんなに関心がないかもしれません^^;
でも、あの時代にこういう人がいたということ、そして彼の日記を通してこの事件について少しなりとも
知る手がかりを得ることができたのは、とても有意義だったと思います。

ちなみに、この事件に関するネットでの論争については興味もないし、近づく気もないのですが、ちょっと
見てみると、中にはきちんとした裏づけを取ったきめこまやかな検証を行っている方もいらっしゃるようです。
どうやら、この本で取り上げられているラーベの日記は、そういう方々にとって、重要な資料みたいです。
この本は、この事件についてより深く知る取り掛かりとしては、かなりの良書かもしれない、と思いました。


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『海外が描いた日本の戦争 ~世界の対日戦争映画が語る日中戦争とアジア・太平洋戦争~』


同じ作者さま(抗日映画論がご専門の研究者)が書かれた、対日戦争に関する映画についての
論評が集められた本です。
P3に「日本では自国の戦争加害の映画が作られず、海外の日本の戦争加害を描いた映画が入ってこない
という状況の中で、日本人はいつしかそういう映画に関してある種の拒絶反応を覚えるようになりました」
という記述があります。一部の人々の過剰とも言える反発によって、海外発の映画を自由に輸入すること
さえ制限されているのはとても残念だし、本来あるべき姿ではないと思います。
また、「日本の戦争加害を描いた映画は日本人を悪く描くことを目的にしているのではなく、
その国の人たちが日本から受けた被害を描いているのです(P5)」のだとも書かれています。
このことはとても重要だと思います。たとえば日本が原爆の映画を撮るとき、アメリカ人を悪く書くことを
目的にすることはないし、アメリカ嫌いを煽る目的で作ったりもしないですよね。
他所の国も基本、そのスタンスは変わらないというわけです。とはいえ、時代によって国によっては、
必ずしもそうとは限らないかもしれません。けれどどっちにせよ、見ないことには批評することさえ
できませんよね。
過剰な反発が特定の映画を遠ざけ、その結果日本の「ガラパゴス化」を誘引しているというのは、
怖いことですが、あるかもしれないと思いました。


この本には、対日戦争がテーマに含まれる、世界中の映画について紹介されているのですが、普通に映画の
論評として面白い内容となっています。
ひとつひとつの作品について、戦争や日本に対する印象がよく分かるエピソードを挙げて、丁寧に解説して
くれるので、ちょっと映画を覗き見したような楽しさがあります。また、年代別に映画を見比べて、戦争への
意識や表現がどのように変わっていったのかなど、色んな目線で解説してくれるところが興味深いです。
特定の国に対する肩入れも偏見も思想的な偏りも感じないですし、誰が読んでも普通に面白いと思います。
この本で紹介されている映画は、かなりの割合で日本では未公開のようです。映画館で公開を妨害する
ような事件を起こされて公開を見合わせた作品もあったり、思っていたよりも、状況はひどいみたいです…。
そういえば、この本の最後のほうに少しだけ言及されていた『セデック・バレ』という作品が日本で公開された
ときのことは、よく覚えています。ツイッターのフォロワーさんがすごくハマっておられるのをTLで見ていて、
評価の高い作品だということは何となく知っていました。反発を恐れて公開を自粛するとか、そういう萎縮した
世の中にならないよう、作品として優れたものは、どんな内容の映画であろうと、きちんと公開されてしかる
べき、という文化はもっと大事にしていかないとだめだな、と思いました。