猫とワタシ

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この記事のみを表示する『屍鬼』感想

本・漫画・映画

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こんにちは!
今日は梅雨の晴れ間で、めっちゃいいお天気です。
日差しはきついけど、風は気持ちよくて、なかなか過ごしやすいです。
これ以上暑くならないでほしい…………(酷暑が来るのが怖い…)

さて、ここのところずっと読んでいた「屍鬼」、ようやく読了しましたーーー\(^0^)/
文庫版・全五巻。5冊とも、そこそこ分厚い感じですが、まったく長さとか中だるみとか
感じませんでした。 どの部分も削れない、必要な箇所ばかりだと分かるので。
「村」という閉じられた共同体、そこに住む村民一人ひとりの置かれた立場、それぞれの
個性、考え方の偏り、その発露としての行動と結果、そこから誘発される別の誰かの
行動…、いろんな「必然」が繋がって、小さな村にじわじわとしのび寄る「死」の蔓延、
その過程が恐ろしく緻密に、そして違和感なく描かれています。どこを切り取って
みても不自然な箇所がない。登場人物の人数が尋常でなく多く、どの人も違った
個性を持っているのですが、「分かる」もしくは「こういう人いるよね」という人ばかりで、
この多彩な人物像を捌ける作者さまの度量の深さたるや、並々ならぬものがあります。
人の内面の汚い部分をこれでもかとばかりに暴いていきますが、どのキャラもなんだ
かんだで憎めないんですよね…。
同時に、登場人物はそれぞれこの作品のなかで「役割」を負っています。個別の人間
ドラマとしてリアルであるのと同時に、彼らは作品を動かす重要なパーツにもなっている。
あくまで高度な技術でもって、難解なパズルのピースを少しずつ埋めていくような印象を
受けます。
後半は、屍鬼の側の視点も入ってきて、内容はより複雑で哲学の色が濃くなってきます。
ホラー要素も濃くはありますが、この作品の底にあるものは正義、秩序を是として生きる人の
群れの危うさ、感情に翻弄される人間の弱さ、または秩序から逃れ(あるいは弾かれ)
ながらも、自己であり続けることの孤独、絶望、そしてその先にあるもの。言葉だけでは
理解するのが難しい事柄を、ストーリーを介してきっちりと語ってゆく。その的確さ、問題に
まっすぐに切り込む逃げのない言葉。私のようにあまり観念的な話を解さない人間にも
分かりやすく書いてくれていて、そこがとても良かった。
内容的にはこれ以上ないくらい残酷な描写が続くので、万人受けしないのは分かっている
のですが、怖いのが苦手なので無理、で読まないでいるのは正直勿体無いと思ってしまう、
すばらしい作品です。
(途中から村人よろしく段々感覚が麻痺してくるしね…笑)
例えるなら、遠くから眺めてもすごい絵なんだけど、近くに寄ってよく観察してみると、
本当に緻密に書かれた人の営みが描かれている…みたいな。
マクロでもミクロでも楽しめる、そんな作品です。

……とまあ、ネタバレを避けた感想? はそんな感じなのですが。

以下は、ネタバレ含む感想というか、雑文です。
これから屍鬼を読もうと思っている方は読まないことをおススメしますw




*************







以下には、ちょっと個人的なことを含む感想など書いておこうと思います~。

最初、一巻で「外場村」という村の成り立ちについて、執拗なまでに書かれていたのが
印象的でもあり、私にはすごく興味深かったです。元々民俗学が好きなので、村の成り立ち
とか行事の話題には食いつきがちなんですよね。
閉じられた「村」、生き物のように有機的に動く共同体、というイメージ。それは
すなわち「秩序」であり、静信の小説の中に登場する「丘」ってことなのでしょうか。
私の理解が間違っていなければ、「秩序」の存在そのものが、神から見放された「流刑地」という
証左、みたいな流れだったと思うのですが…、神と繋がるために必要なことも「秩序」ってこと
だったかと思います。秩序の定めた供物を捧げなかった兄は弾かれた、ということですから。
屍鬼とは、そこ(秩序)から逸脱した存在であり、それはすなわち「異端」である。そして真に神に
奉仕したいと願うあまり、秩序から逸脱し続ける人も同じく「異端者」であるとすれば、静信が
あのような最後を辿ったのもまた必然なんでしょうね…。
人物としては非常にめんどくさくてまどろっこしいこの人なんですが、静信がこの作品の重要な幹と
なっていることには間違いないですね。

人物で魅力的だったのはやっぱり敏夫かな。ウェットなところが全然なくてあくまで合理的。
ハリウッドのパニック映画の主役を張れるタイプですね(笑)
どんどん先に立って物事に当たってゆくところが気持ちよかったです。結構ひどいことをしているん
だけど、この人なりの信念で動いているのが分かるせいか、なんか霞んでしまうんですよね^^;
静信の選んだ道を、あいつらしいと肯定(?)しているところに、隔たりながらも互いを尊重する
この二人の深い繋がりを感じました。よきかな…。
騒動のあと、敏夫にどんな変化があるのか分からないですが、村の外で好きに生きていく未来が
あればいいなと思います。

夏野とか、徹とか、正雄、恵、かおり、昭など、の若者世代はほんま切なかったです。。。。
一番弱そうなかおりが生き延びるあたりが、なんか皮肉めいてるというか…。
村を出たい夏野が受験勉強を頑張ってたのが、ちょっと自分と重なりました。
私も、地方から出るのを目標に、受験勉強を頑張ってたクチなので。

あとは、そう、「人の親」世代ですよね。
やっぱり元子さんがね…。狂っちゃって気の毒でしたね。あんなによくしてもらったお友達
まで裏切って。。。
親世代といえば、印象に残ったのは夏野のお父さん、結城のキャラですね。
「地縁」に憧れて田舎に引っ越してきた都会の人、という設定…(微妙にしんどいw)
息子である夏野の気持ちなど考えてみたこともない、みたいな。
全然悪い人じゃないんだけど、そういう親にありがちな「鈍感さ」を持った人だったのかな…。
結城と一緒につるんでた「学のあるおじさん集団」が頑なに屍鬼を受け入れられなかったところは
リアルだなぁと思いました。

あとは、詳しく語られていなかったけど、辰巳の過去が気になります。
あの人、生死も不明だけど(エッ違う?)、結局どうなったのかな。
私はなんとなく、しぶとく生きているような気がしているのですが、どうだろう。

あと、とても個人的なことなのですが、「地縁」というものにすごく興味があって。
結城が「地縁」に惹かれたみたいに、そういうものに惹かれる人って多いですよね。
それを「絆」と呼ぶこともあるかもしれませんが、この作品の中で言い換えれば、
それこそが「秩序」そのものなのかもしれません。
本当のところ、作者さまは「地縁」を元に構築される「秩序」をどのように捉えて
いたのかな。沙子が切望し、夏野が、もしかしたら静信も憎んでいたそれは、
結局、村の崩壊で消えてしまったのですが、正直、私はなんだかスッキリしました^^;
というのも、今、色んな場所で「秩序に従え」って息巻く人が多いような気がして…。
ネットの執拗なバッシングとか、加熱しすぎる報道とか。ああいうのを見るとすごくしんどく
なるのと同時に、その熱が、屍鬼狩りを実行した外場村の人たちとどこかダブって見えてしまう。 
今って、そういう「逸脱したもの」に対する怒りのエネルギーが強くなっているように思います。
なんだか胸の中でくすぶっていたそういうしんどさを、村と一緒にこの本が燃やしてくれた
ようで、これほど救いのない陰惨な話なのに、なんだか妙にスッキリとした後味だったりも
するのです(笑)

…というのはまあ、私の個人的な解釈なので、必ずしも正、ではないのですが。
いずれにしてもすごい作品でした。10年ぐらい、絶対ハマるから時期を選んで読もう…と
思っていた私の予想はまったく外れてなかった(面白いぐらい、予想通りにハマりましたw)
多分、私の好きな本のベスト10には確実に入る内容の作品です。
読めてよかった。 すばらしい作品を書いてくださった作者さまに、心から感謝です!!



コメントの投稿

secret

こんにちは。すごく面白そうですね…読んでみたくなりました。
でも以前、この作者さんの「残穢」という本を数ページ立ち読みして止まらなくてその場で買ったものの、最初の方のまだ何も起きていない辺りで怖くて怖くてもう読み進められなくなったことがあったので、私に読めるかどうかかなり不安です。(;´д`)本屋さんで見かけたら手にとってみます。
すごい作家さんですね……

Re:Re:

こんにちは!
あー、この作品、なのりさんにはどうだろう、、、
めっちゃ怖いし、最後あたりはもうめちゃくちゃきついので
厳しいかもしれません…

でも、宗教的な葛藤とか、その辺りのテーマは、
多分お好きなんじゃないかな、とも思います。
旧約聖書の話がベースになってる部分もありますし…


あああーーー、でも、どうだろう。。
すごく怖くて残酷なのでね…、ほんと、そういうのが苦手な
方にはお勧めが難しいところはあります。
何となく、なのりさんの読書傾向を知ってるので特に…。

 
とりあえず、読めるところまで読んでみる、ってのはアリかも
しれませんね。
図書館でとりあえず一巻を借りてみるか、古本屋で安価に一冊
入手してみるところから始めて、様子を見られるのもひとつ
かもしれません。
何せ、5巻もありますからね~^^;


内容については、私は大好きです!!!
ほんまにすごい作家さんだとおもいます。
怖いのが平気なら、是非お勧めしたい本ではあります。
(でも、容赦ない内容ですので、無理のない範囲でどうぞ…!!!)